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2022年4月 5日 (火)

第74回研究発表会:発表・講演要旨

Beowulfにおける「王」・「戦士」・「人」
木内祥太
 Beowulfには特徴的な類義語群がいくつか存在する。そのうち「王」と「戦士」を意味する語は特に多い。この作品の「戦士」を扱った代表的な研究としてBrady(1983)が挙げられる。また古英詩一般を対象に、主に意味の観点からその2語を分析したStrauß(1974)は包括的である。しかし、彼らは両者の関係性には消極的な見方をしている。本研究では「王」と「戦士」、さらにそれらと密接に関わる「人」を対象に、社会背景を踏まえながらBeowulfにおけるその関係性について分析していく。

十七世紀前半のイギリス宮廷における『冬物語』の上演
田村真弓
 ウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare, 1564–1616)の『冬物語』(The Winter’s Tale, 1609–10)は、1612年から13年にかけて、プファルツ選帝侯フリードリヒ五世とエリザベス王女の祝婚の余興の一つとして上演されたことから、この作品とジェームズ一世の平和政策の一環としてのフリードリヒとエリザベスの結婚との関係は明白であり、すでに多くの批評家たちによって両者の関連性が指摘されている。一方、この劇が、17世紀前半に三度宮廷で上演されて以降、18世紀半ばまで上演されなかったことは注目に値する。本発表では、1618年、1624年、1634年の『冬物語』の宮廷上演に注目し、これらの上演が、ヨーロッパ大陸で三十年戦争に巻き込まれたエリザベス・ステュアート(Elizabeth Stuart, 1596–1662)と大いに関連していることを論じたい。

批評とエートス — マシュー・アーノルドのクラシシズム、ヒストリシズム、トラクテリアニズム
町本亮大
 マシュー・アーノルドは、あるリベラル派の主教の著作を「文芸共和国のつつましき一市民」として批評するなかで、社会全般に知識や真理が有効に伝播するためには、想像力を通じて「無学な多数者」の心をやわらげ、彼らの精神に知識が根を張ることを可能にする土壌づくりから始めなければならないことを主張する。古典派の先達であるポウプの『批評論』 にも通じるこの洞察は、古代ギリシア以来の弁論術の伝統を踏まえたものといえよう。しかしヴィクトリア時代の知的世界において、受け手の「エートス」(品性、人柄)への配慮という論点の理解は、ヘルダーと結びつく歴史主義的思考やオクスフォード運動の宗教知識論によって変容を被ったと考えられる。本発表では、変容するエートス概念がアーノルドの批評プログラムの中核をなす文化やアカデミーの理念といかに接合するかを検討したい。